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会報

「第99回日本経団連労働法フォーラム兵庫大会の概要」

 (社)日本経団連主催・経営法曹会議協賛による、「第99回日本経団連労働法フォーラム」が10月26・27日に神戸で開かれ、全国から企業の人事・労務担当者315名、経営法曹弁護士111名が参加しました。
 今回のフォーラムは、1日目に「企業・営業秘密の保護・管理の法的留意点」、2日目に「企業組織の再編・変容と労働法」をテーマに、不正競争防止法や労働契約承継法の解釈や判例の分析検討などが行われ、それぞれについて質疑応答がなされました。以下、フォーラムの概要について紹介いたします。

研究報告1

 企業の知的財産としての企業秘密の対象範囲、保護の必要性及び雇用の流動化に伴う漏洩の危険性並びに保護手段等について、藤原正廣弁護士から報告があった。
 藤原弁護士は、不正競争防止法による秘密保持義務、雇用契約に基づく誠実義務の一内容としての秘密保持義務・競業避止義務、誓約書の提出等による秘密保持契約などについて、それぞれに関連する判例を用い、企業が対応する上での注意事項や対応例等を披露した。

【秘密保護に関する基本的視点】

 平成14年2月の小泉首相(当時)の施政方針演説において「知的財産立国」宣言がなされ、同年12月に「知的財産基本法」が制定された。この法律の中で、「営業秘密」が「知的財産」として位置付けられるなど、企業における営業秘密の保護の強化が進んでいる。
 一方で、従業員に対しては業務遂行のためにそうした秘密は開示せざるを得ない。また、雇用の流動化に伴い、秘密に関与した従業員の退職機会が増加し、秘密漏洩の可能性も高まっている。
 しかしながら、秘密保持義務を強化しすぎることは、退職者にとっては、職業選択の自由への制限となる可能性もあり、秘密保護と労働者の職業選択の自由との調整の視点が必要となる。

【法的に保護される秘密】

 不正競争防止法における「営業秘密」に該当するための要件は、(1)秘密管理性(2)有用性(3)非公知性の3つである。つまり、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
 例えば、秘密管理性については、物理的・技術的管理と人的管理の側面から判断される。
 それぞれ経済産業省から出されている営業秘密管理指針にその詳細が記載されている。なお、非公知性について、特許法の要求する特許要件としての新規性や進歩性を備えている必要はないとの判例が出ている。
 こうして適用対象となる「営業秘密」については、秘密保護の要請が従業員・退職者の職業選択の自由よりも常に優先され、秘密保持義務・競業避止義務の有無・有効性を問うことなく、民事的保護・刑事的保護を受けることができる。

【民事的・刑事的保護】

 民事的な保護としては、営業秘密の使用を差し止めることによって、営業秘密を利用した競業行為を差し止めることが基本となる。また、損害賠償請求や、損害額の立証が困難な場合には損害額の推定といった保護も受けられる。
 一方、刑事的な保護については、近年、法改正により、営業秘密侵害行為に対する厳罰化が進んでいる。平成17年改正により、国内で管理されている営業秘密の国外での使用・開示が刑事罰の対象となるよう適用範囲を拡大し、平成18年改正においては、前年に引き続き法定刑を引き上げている(平成19年1月1日施行予定:10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金・法人処罰:3億円以下の罰金)。
 なお、平成18年6月の「知的財産推進計画2006」において、退職者による営業秘密の使用・開示に対する刑事罰の拡充が検討されている。
 しかしながら、実際に、刑事罰の対象となると、民事訴訟手続きのような公開制限規定がないため、訴訟手続きの中で秘密が公開されてしまう。したがって、厳罰化は営業秘密侵害行為を防止するための威嚇が目的といえる。

【秘密保持義務・競業避止義務】

 在職中については、雇用契約に基づく誠実義務の一内容としての秘密保持義務・競業避止義務があり、これを確認・具体化する意味で、多くの企業が就業規則により、義務を課している。
 退職後については、諸説ある中で、信義則上の義務として引き続き秘密保持義務を負うという学説が有力となっている。この秘密保持義務により、秘密を利用した競業行為の避止が求められる。しかしながら、実務上の対応としては、退職後の秘密保持義務・競業避止義務を就業規則に規定すると共に誓約書の提出等による契約締結を求めるべきである。なお、この際、存続期間については定める必要はなく、「秘密としての有用性・非公知性が失われるまで」というような不確定期限でもよい。

【誓約書の提出】

 誓約書については、退職が具体化していない入社時や異動時であれば提出を受けやすいので、退職が具体化する前に誓約書の提出を受けることを検討することが望ましい。
 なお、不提出者に対する制裁の可否であるが、信義則上当然に負担している秘密保持義務を確認する内容のものであれば、従業員の良心の自由への制約となるとは考えにくく、業務上の必要性も認められるため、職務命令違反・秩序違反としての懲戒処分をすることは可能であると考えられる。
 派遣労働者からの誓約書については、労働者派遣法第24条の4の規定から、派遣労働者が派遣上負担している秘密保持義務の内容、例えば「顧客との取引内容に関する情報」というように、情報カテゴリーを示すなどして、その内容を確認・具体化する範囲であれば、提出を求めることが可能と解すことができる。
 ただし、営業秘密管理指針では、「派遣先企業と派遣従業者とが直接秘密保持契約を締結することが直ちに法律違反となるわけではないが、労働者派遣事業制度の趣旨からは、派遣先は、派遣従業者と直接秘密保持契約を締結することよりもむしろ、雇用主である派遣元事業主との間で秘密保持契約を締結し、派遣元事業主が派遣先に対し派遣従業者による秘密保持に関する責任を負うこととすることが望ましいものである」とされている。

[質疑応答]

【問】派遣社員が営業秘密を利用していることが発覚した場合には、どういう対応が考えられるか。
【答】締結している派遣契約の債務不履行(民法第415条)として対応するか、派遣元の使用者責任(民法第715条)として対応することが考えられる。

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研究報告2

 合併・分割・営業譲渡などの企業組織の再編に関して、再編後の労働条件や処遇の決め方などの法的留意点などについて、野口大弁護士から報告があった。
 報告の冒頭、最近の国内における企業組織再編の状況について触れ、国内のM&Aは2006年9月末現在で、2000件超、金額ベースで9兆円を超え、前年度と比較して大幅に伸びている、と報告された。こうした動きは、M&Aが企業の成長戦略として定着してきた証左であると指摘、また企業組織の再編を成功させるためには、経営者は従業員に対し、組織再編の必要性、将来のビジョンを示し、従業員の納得性を高めていかなくてはならないと強調した。

【合併】

 新設合併、吸収合併のいずれも合併の効力発生時に解散会社の権利義務は全て包括的に承継されることに伴い、労働契約についても、当然にそのまま承継され、承継に関する労働者の同意は不要である。
 労働契約の内容(就業規則、労働協約等)について、実務的には新会社の就業規則の付則において、適用除外規定を設ける等によって旧会社の労働者については旧会社の就業規則などの適用を維持し、その後統一的労働条件の設計をすることになる。
 統一的労働条件の実現の方法は、「労働組合がある」場合には労働協約によって労働条件を変更し、「労働組合がない」「労働協約で合意に達しなかった」「多数組合とは合意したが、少数組合は同意しない」等の場合には、就業規則の変更によって労働条件を変更せざるをえない。
 こうした場合、労働条件の不利益変更の問題が発生するが、就業規則の不利益変更に関するこれまでの判例では、裁判所が重視するファクターには以下が挙げられる。

  • ・労働者が被る不利益の程度
  • ・使用者側の変更の必要性の内容、程度
  • ・変更後の就業規則の内容自体の相当性
  • ・代償措置その他関連する他の労働条件の改 善状況
  • ・労働組合等との交渉の経緯
  • ・同種事項に関する一般的状況
 合併の場合には、大曲市農協事件、朝日海上火災保険事件などから、労働条件を統一する必要性が高いというファクターはプラスに働くと考えられる。

【事業譲渡】

 事業譲渡をする場合、従業員を譲受会社に転籍させたい場合と転籍させたくない場合とに分けて考える必要がある。

○従業員を譲受会社に転籍させたい場合

  • 法的には、労働契約の譲渡と、一旦譲渡会社を退職して譲受会社に再雇用される場合(退職再雇用)の2つの手法がある。
  • こうした場合の従業員の同意の必要性について、退職再雇用の場合は、従業員の同意が必要であるのは当然であるが、労働契約の譲渡の場合にも、本位田建築 事務所事件、東京日新学園事件などから、「労働者の同意がなければ、当然には 労働契約は承継されない」(非当然承継説)という考え方が現在は主流である。

○従業員を譲受会社に転籍させたくない場合

  • 先述の非当然承継説に立てば、譲渡会社と譲受会社との間で、特定の従業員(勤務成績不良や譲受会社の労働条件に同意しない従業員など)は譲り受けないと合意することは自由であり、これが大原則である。このため、別会社に事業譲渡をして旧会社は解散して従業員は全員解雇、その後別会社が一部従業員を採用する、というスキームも実務上多く見られる。
  • しかし、何らかの形で、採用されなかった従業員をも救済する(別会社が従業員を承継する)判例が多い。

【会社分割】

 会社分割に伴い、労働契約を承継させる場合、労働契約承継法に従って従業員を転籍させる場合の手続きは以下の通りである。

  • (ステップ1)
  • 労働者の理解と協力を得る手続き(承継法7条?分割会社は当該分割に当たり、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする)
  • (ステップ2)
  • 個別の労働者との協議(商法等改正付則第5条?会社法の規定に基づく会社分割に伴う労働契約の承継に関しては、会社分割をする会社は、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する通知をすべき日までに、労働者と協議をするものとする)
  • (ステップ3)
  • 労働協約を締結している労働組合がある場合には労働協約の承継についての協議(承継法6条2項?労働協約を締結している労働組合とは、労働協約の承継をどうするのか協議し、分割計画書等作成前に合意することが望ましい)
  • (ステップ4)
  • 労働者と労働組合に対する書面通知(承継法第2条?会社は労働者に対し、労働契約を承継会社が承継する旨の分割契約等における定めの有無、異議申出期限日等を書面により通知しなければならない。)
  • (ステップ5)
  • 労働者からの異議申出(承継法第4条3項?異議の申し出のできる労働者は、通知期限日の翌日から株主総会の前日までの分割会社が定める期間(この間少なくとも13日間に申し出る)

【組織再編(事業場閉鎖等)に伴う整理解雇】

 整理解雇を実施する上でのファクターとして、@人員整理の必要性、A解雇回避努力義務、B人選の合理性、C手続の妥当性の4つが挙げられているが、それぞれの要素を総合的に評価し判断することになる(4要素説・4つ全てを満たす必要があるというものではない)。
 部門閉鎖の場合、部門閉鎖という企業編成上の決定については、原則として経営判断を尊重すべきであり、部門を閉鎖する以上、それに従事する人員が不要となるのは当然であるから、人員整理の必要性は当然に肯定できると考えるべきで、判断の対象は「人員整理の必要性」ではなく、「部門閉鎖の必要性」を判断すべきである。
 また、最近の判例を見てみると、先述の4要素以外のファクターとして、以下の項目も重視される事例が増加している。@退職金の割増支給、A再就職するまでの経済的補償、B再就職先の提供・あっせん、C職業訓練機関の紹介と費用負担等。しかし、現段階では、他の解雇回避措置をとることが困難な場合にはじめて整理解雇を正当化する要素となる、という考え方が一般的である。

[質疑応答]

【問】企業全体として収益があがっている場合でも、不採算部門を閉鎖して整理解雇をする必要性は認められるのか。
【答】かつては人員削減をしなければ倒産必至という事情にあることを要する、とする判例もあったが、基本的には、部門閉鎖については企業の経営判断を尊重して必要性を肯定する傾向にある。
 また、解雇回避努力義務(希望退職等)は閉鎖部門に限らず、企業全体で検討するべきであるが、最終的に誰かを解雇せざるをえない、という場合の解雇の対象は、必ずしも企業全体で選定しなければならないというものではない。要は人選の合理性の問題である。