「文化機関としてのINAX」
株式会社INAX 取締役社長 杉野正博(スギノ マサヒロ)
| 昭和19年11月生まれ | |
| 昭和42年 3月 | 名古屋工業大学窯業工学科卒業 |
| 昭和42年 4月 | 伊奈製陶(株)(現・(株)INAX)入社 |
| 平成 2年 1月 | 同社 営業本部商品企画統括部商品第1部長 |
| 平成 4年 1月 | 同社 取締役新建材事業部長 |
| 平成 6年 1月 | 同社 取締役建材事業本部タイル事業部長 |
| 平成 8年 1月 | 同社 常務取締役建材事業本部長 |
| 平成11年 4月 | 同社 常務取締役経営管理統括部長 |
| 平成12年 1月 | 同社 専務取締役 |
| 平成13年10月 | 同社 代表取締役社長 |
| 平成16年 6月 | 同社 代表取締役 取締役社長 社長執行役員 |
| 現在に至る | |
「企業は経済機関であるとともに、文化機関でなければならない」という、現名誉会長の言葉がベースになって、INAX(当時の伊奈製陶)の文化活動が始まり、現在に至るまで26年間継続しています。
それは、1981年に東京京橋の銀座通りに、9階建てのショールームを開設し、その2階に2つのギャラリーを開設、独自の企画展示をスタートしたことから始まりました。その後、1985年創業60周年を境に、CIを導入しINAXに社名変更しましたが、その際改めて制定した企業理念にもこの考え方が盛り込まれています。その後東京に続き、大阪、名古屋、札幌他のショールームにも展開し、さらに建築や美術を中心とした出版事業をスタートし、銀座ショールーム一階にブックギャラリーもオープンしました。
一方、創業の地「常滑」では、「窯のある広場・資料館」や「世界のタイル博物館」を開設し、現在では、INAXライブミュージアムとして運営しています。これらの活動は、自社の専任スタッフによる独自企画によって運営しており、社外からも高い評価を頂いています。またその活動と社外への発信が、社員の一人一人の文化的な素養の醸成、商品やデザインの開発、ブランド価値の向上にもよい影響を与えています。
勿論、地道な文化活動とはいえ、非営利事業であり、しっかりした本業の経営の土台の上に運営されることが前提ですが、「企業は経済機関のみならず、文化機関でもあるべき」という思想は、同時に「サービス業型製造業」や、「デザインを大切にする企業」を目指そう!という当社の事業運営の指針にもつながっています。
企業は単に商品としての“モノ”の提供だけでなく、「生活文化や人々のよりよい暮らしを提供していくことが、事業の使命である」との当時の社長の思い、経営思想がこの表現に盛り込まれているように思います。「住」にかかわる当社の業態からして、当然の使命である訳ですが、四半世紀前の当時社長の伊奈さんは、この考え方を社員に根付かせようと腐心されたことを記憶しています。
話題は飛びますが、昨年10月、常滑市の創業の地に、前述した資料館やタイル博物館に加えて、モノづくりの心と技術を伝承する「ものづくり工房」と、ミュージアムの目玉のひとつ、やきものの原点である世界の「土」をテーマにした「土・どろんこ館」を開設しました。その中の展示ホールで、現在、アメリカの建築界の巨匠「フランク・ロイド・ライト展」を開催しています。当社の創業者伊奈長三郎が、ライトの設計になる、帝国ホテル旧本館(大正12年完成)に採用された外壁タイルや、装飾テラコッタの製作に父初之烝とかかわり、後にそこで活躍した常滑の職人たちを雇用して、建築用タイルの製造をはじめたことが、創業のスタートですが、現在、ライブミュージアムオープンの記念行事の一つとして企画し開催しています。是非ミュージアムにお越しください。(〜9月末まで開催)
このように、3大都市を中心としたギャラリー活動と、常滑のミュージアム活動を結んで、当社の文化活動は続いており、多くの市民の皆さんや専門家の方にも楽しんでいただいています。
理念のない企業は30年と持たないと言われます。快適な住まい造りにかかわる企業として、足もとの利益追求のみに走ることのないよう、長期的視野にたって、社会から、また世界から将来にわたって必要とされる企業を目指して、人材と企業文化を育てて、本業の事業運営とともに、この文化活動も大切にしていきたいと思っています。
(次号7月号は、アイカ工業(株)取締役会長 冨田章嗣様にお願い致します)


