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いい「ものづくり」いい「ひとづくり」

新東工業株式会社 代表取締役会長 矢野 武(ヤノ タケシ)

新東工業株式会社 代表取締役会長
昭和13年8月生まれ
昭和36年3月 名古屋大学 経済学部 経済学科業
昭和36年4月 新東工業株式会社 入社
昭和63年6月 同社 取締役
平成 2年6月 同社 常務取締役
平成 6年6月 同社 専務取締役
平成 8年6月 同社 代表取締役社長
平成14年6月 同社 取締役副会長
平成18年6月 同社 代表取締役会長
現在に至る

 「新東工業」?どんな会社?と尋ねられることが多い。答える前に、こちらから尋ねる。「鋳物」ってご存知ですか?その後で「鋳物をつくる機械をつくる会社」で創業72年になります。名古屋証券取引所への上場は昭和29年です。と続け、さらに車のエンジンは鋳物で出来ていて、そのエンジン用鋳物素材を1分間に4個つくる全自動プラントを得意としています。と申し上げ、さらに鋳物づくり、鋳造工場づくりに必要な機械を揃え、エンジニアリング出来る世界で他に無い会社と申し上げます。
 しかし、まだイメージが涌きかねるようです。いずれにしても5千年の歴史がある鋳物づくりを、機械化するために創業し、鋳物づくりの機械の国産化を始めた会社であります。現在私どもでこの事業分野は売上高で31%を占めています。
 鋳物を大量に必要とする産業は、金属加工機械、鉄道車両、船舶、紡織機、自動車などで、特に昭和の初期から現代までの産業発展を支えてきました。
 一方、鋳物産業は裏方で、地味なイメージ、いわゆる3K(きつい、きたない、きけん)産業のイメージがまだあります。また専業の大手企業は世界的にも1桁台で、中堅中小の鋳造会社が多く、他は大手の自動車メーカー、建設・鉱山機械メーカーなどの直属鋳物工場が多々といったところです。
 最近は、経済産業省が日本の「物づくり」力が日本の産業の現在の国際競争力の原点という認識を強く持って、将来の日本の産業力を左右する分野として、素形材産業分野に焦点を当てて、素形材産業ビジョンをまとめ公表しました。その意図にそって、各関係工業会はそれぞれに10年ビジョン策定を進めています。
 素形材という言葉も一般的ではないのですが、素材(金属、窯材、セラミックス、プラスチックス、ゴム等)に加工を施した鋳造品、鍛造品、プレス加工品等を素形材と言っています。
 「ものづくり」立国がやはり日本の行く方向であり、日本の物づくりの強み、基盤技術の継承、高度化に取り組むことが国の重要な施策の一つと認識されてきています。
 その現われの一つとして、「ものづくり展」が経済産業省の旗振りで、平成19年1月16日から30日間、国立科学博物館で開催され、日本の物づくり基盤技術の優位性がアピールされます。そのようなことから、いい「ものづくり」−鋳もの−「鋳物づくり」産業の国際競争力の向上に思いを致しているところでございます。
 「物づくり」には「人づくり」が欠かせない、「物づくり」は「人づくり」を進める、と言われています。それはこれまでの物づくり産業の発展の歴史が証明しています。ただそれが実現されていくための仕組みや、制度の運用が個々にとっては当然大切な条件であります。それに関わる国の支援策、支援制度が「素形材産業ビジョン」にそって、人材育成を含め、「新経済成長戦略」として銘打って、打ち出されてきています。 物づくり企業としては、人による物づくりの経験・体験の積み重ねこそ、物づくり力、技術・技能力を向上、進化させるものと考え、そのためには企業自身の競争力の維持と持続成長につなげる体制の整備構築が欠かせません。
 最近は少子高齢化、団塊の世代のリタイアが問題となり、定年延長制、技能伝承制度などが進められています。年功序列、終身雇用という日本的と言われ、それからの脱皮を近代化の一つとされてきたことが、再考の対象となりつつあります。
 私どもでは、体験・経験の蓄積による技能・技術レベルに応じたキャリア制度による待遇と長期雇用制度による処遇を基本制度と位置付けており、退職金制度も確定給付制度を機軸とするなど、物づくり企業のありかたを考えているところです。
 いずれにしても、いい「ものづくり」、いい「ひとづくり」は企業にとっても、社会にとっても、日本にとっても、大切な「国づくり」競争力向上の基本であることを物づくり企業の経営者の一人として痛感しており、ついそんなことの一端を書かせていただきました。

(次号1月号は、学校法人大同学園理事長 田中 卓 様にお願い致します。)