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「『アスペン・セミナー』へ参加して」

日本高圧電気株式会社 取締役社長 高岡 本州(たかおか もとくに)

日本高圧電気株式会社 取締役社長
昭和35年7月20日生まれ
昭和58年3月 名古屋大学工学部応用物理学科卒業
昭和60年3月 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科修士課程修了
同 年 3月 日本高圧電気株式会社入社
昭和62年6月 スタンフォード大学大学院留学経済システム工学科修士課程修了
平成7年5月 同社専務取締役 就任
平成10年5月 同社代表取締役社長 就任
現在に至る

 日頃雑事に追い回され「勉強」という二文字から遠ざかっている最近だが、知人の強い勧めで、一週間ほど経営者向けのセミナーに参加する機会があった。学ぶテーマは「哲学」。まとまった期間セミナーに参加するのは久しぶりであった。しかも哲学のセミナーはもちろん初めてである。
 「哲学のセミナーとは」と思われるだろうから、このセミナーを簡単に紹介させていただきたい。主催は米国のアスペン研究所の日本版というべき日本アスペン研究所。セミナーのモデレータ(進行役)には哲学の世界的権威である今道友信先生、文化功労者である本間長世先生など日本を代表する方が務められ、企業、官公庁、NGO/NPOの幹部が二十名前後参加する。五泊六日のコースで「世界と日本」、「自然・生命」、「認識」、「美と信」、「ヒューマニティ」、「デモクラシー」の六つのセッションから構成されている。セッションの中でプラトンの「ソクラテスの弁明」、孔子の「論語」、岡倉天心の「東洋の思想」、「アメリカ独立宣言」、芭蕉の「奥の細道」、ダンテの「神曲」、福沢諭吉の「学問のすすめ」、ロックの「市民政府論」、「新約聖書」、ダーウィンの「種の起源」などの知の集積ともいうべき世界、日本の古典を読み、参加者同志が自らの意見を披露し、「対話」するものであった。哲学、宗教観、生命とは?人間とは何か?幸福とは何か?民主主義の問題は?・・・日ごろ考えることのないようなテーマに対して思いをはせる非常にいい機会であった。まさに自らの「無知の知」を知る機会であった。
 「なぜ経営者に哲学か」と思われるかもしれないが、最近の企業の不祥事を見ると原因はすべて経営者の企業経営に対する哲学の欠如ではないかと思われる。米国のエンロン事件、日本の食品業界、自動車メーカのリコール問題などいずれも経営哲学の問題に帰結する。
 セミナーの名前からわかるようにセミナーを主催する日本アスペン研究所の本家であるアスペン研究所は米国のコロラド州のアスペンに本部を置く。ゲーテの生誕二百年祭をきっかけに、1950年に米国で誕生した。第二次大戦後の間もないころに敵国であったドイツのゲーテのヒューマニズムに学び、そこから哲学・古典による「対話」を通して、高い理念をもつビジネス・リーダーを育てようと、民間経営者たちがこういった組織を作り上げた米国の懐の深さには驚きを禁じえない。また、このセミナーを日本に導入した日本の財界人たちの努力にも敬服する。
 グローバル化の波の影響を受け、我々のような中小企業は経営の舵取りが非常に難しい時代になってきた。新たな市場を求め海外に行く機会も多い昨今である。猛烈な経済発展の中国を訪問し人々の大胆なお金の使い方に10年前の日本のバブルを思い起こすこともある。また昨今の日本では経済情勢の厳しい折、業績にこだわるあまり、哲学を忘れた経営に走る企業もある。
 今回のセミナーで世界と日本の古典を勉強したが、古典の中には我々が忘れてならない物事の本質が述べられているように思う。我々の企業活動は人類の発展のため、つまり社会のため、お客様のため、そして会社で働く社員のためであることを再度強く認識した一週間であった。

(次号6月号は、瀧定名古屋株式会社 代表取締役社長 瀧 昌之 様にお願い致します。)