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「微生物の恩」

天野エンザイム株式会社 代表取締役社長 天野 源之(あまの もとゆき)

天野エンザイム株式会社 代表取締役社長
昭和31年11月18日生まれ
昭和54年3月 日本大学 経済学部卒業
昭和57年3月 天野エンザイム(旧 天野製薬)株式会社入社
昭和62年10月 同社取締役
平成3年6月 同社取締役副社長 兼 営業本部長
平成7年6月 代表取締役社長
現在に至る

 京都の洛北の地に、曼殊院門跡という名刹があります。その境内の片隅に「菌塚」があります。この「菌塚」は昭和56年に、人類のために役立ち、犠牲となった無数億の微生物に対しての感謝と「ちいさきいのち」に供養の心を込めて、建立されたものです。
 微生物は微細な生き物であり、あらゆる生命の営みに深く関係しています。弊社は、微生物を培養し、そこから生み出される酵素をつくり販売することに特化しました。まさに微生物のお陰により生業を立てているといえます。
 酵素は、蛋白質です。アミノ酸の長く連なった鎖のような状態でできており、全ての生物の細胞に存在していて栄養分をエネルギーに変え、新陳代謝をコントロールするという大切な役割を果たしています。卵の白身や、大豆などの蛋白質と違う点は、体の中での様々な化学反応をすすめる「触媒」の機能をもつということです。また酵素には役割分担があり、一種類の酵素は特定の物質に対してしか反応しません。人間の体内には約2500種類もの酵素があり、手足を動かすことも、考えることも人間の体内で起こること全てが酵素の働きで起こされています。
 酵素と酵母が混同される場合があります。酵母は微生物であり生き物です。酵素は前述のとおり蛋白質です。エンザイムとは酵素のことを言いますが、「酵母の中にある」という意味です。
産業用に利用される酵素は、カビ、バクテリア、酵母などの微生物により培養するか、植物や動物の臓器から抽出し、精製し生産します。
 酵素の産業界への用途開発は急速に進み、医薬では胃腸薬に広く配合され、診断薬でも糖尿病の血糖測定など数多くの実用例があります。食品の分野では、最も古くから利用されているのはチーズ製造用です。ブドウ糖、水飴などの甘味料の製造や、また日本の伝統的な味の世界では味噌、醤油、日本酒などの醸造用にも使用されています。
 近年では調味料の製造、食用油の改質、かまぼこ・ちくわの食感改良など食品での酵素の利用は増加の一途をたどっています。
 日本には歴史的にこうした微生物を活用した世界に先駆けた研究が数々あり、実用化され各種業界に貢献しています。
 高峰譲吉先生の消化酵素「タカジアスターゼ」は余りにも有名ですが、ブドウ糖生産、微生物レンネット(チーズ生産用)、機能性オリゴ糖の生産、蛋白質を加工する微生物トランスグルタミナーゼ、トレハロース生産等々「日本発、酵素および酵素による事業化」は数々の成功を収めています。
 日本の微生物に係わる伝統的なバイオテクノロジーの中には、素晴らしい明日を築く「元気」が潜んでいます。自信を持ってチャレンジできる日本の得意分野です。
 古くて新しい酵素事業により、新しい価値を創生し、人々の生活に少しでも貢献し、「微生物の恩」に報いたいと決意しています。

(次号5月号は、日本高圧電気株式会社 代表取締役社長 高岡本州 様にお願い致します。)