「光と影」
東朋テクノロジー株式会社 取締役社長 富田 英之(とみた ひでゆき)
| 昭和33年1月11日生まれ | |
| 昭和57年3月 | 慶応義塾大学経済学部 卒業 |
| 昭和57年4月 | 三菱商事株式会社 入社(本社 宇宙航空機部) |
| 昭和61年10月 | 東朋テクノロジー株式会社 入社 |
| 平成6年9月 | 同社 専務取締役 |
| 平成13年1月 | 同社 取締役社長 |
| 現在に至る | |
華やかなクリスマスの電飾に照らされるなか、カップルや若者のグループを中心とした人込みが深夜十二時を過ぎても途絶えず、空車のタクシーなど見当たらない。林立する高層マンションには、煌々と灯りがともり、その脇のショッピングモールの建築現場では徹夜の突貫工事が急ピッチで進められている。昨年末に出張で滞在していた上海中心街のクリスマスイブの光景である。
この活気と華やかさに相反するもうひとつの顔を感じる時がある。それは雨の上海である。雨が降ると上海の街は一変する。排水が悪いのか舗道には多くの水溜まりができ、ビルの外壁もくすんでしまう。雨合羽をかぶった自転車が突然目立つようになり、タクシー乗り場は長蛇の列となる。雨でお化粧が落ちてしまうと言ったら失礼になるかもしれないが、発展途上国の顔が顕著に現れる。まさに光と陰、明と暗が混在した街である。
浦東国際空港と上海市内を結ぶリニア、F1カーレース、ユニバーサルスタジオ、二〇一〇年万国博覧会など上海の経済を牽引する施設やイベントは目白押しである。また電子、自動車などの基幹産業に加えて半導体、液晶といったハイテク産業の上海での事業展開はさらに加速されつつある。この観点からすれば現在、世界で最も活力あふれる街のひとつであろう。一方深刻化する電力不足、大気・水質汚染、恒常化する交通渋滞、増え続ける交通事故(中国での交通事故死者数は年間十万人)。
これらは経済の発展に伴う負の課題(負の経済)であり、日本も高度経済成長時代に経験した。これらは時間をかければ解決可能なものであるが、今の上海を含めた中国の本質的な問題は更に根が深い。供給過剰のもとでの価格競争によるデフレ、国有企業を中心とした企業内失業、金融機関の不良債権(四大国有銀行の不良債権比率は公式発表を大きく上回り八〇%という説もある)など、まさに現在の日本と同じ課題が山積しているのである。
現在の中国は市場資本主義とは言えない。官僚という権力による資本主義である。外国資本の導入と農村部から都市への資金移動という二つの錬金術により生み出された『作為された繁栄』であると言えよう。作為された繁栄は所詮偽りであり時間とともに底が割れ消滅してしまうのか、あるいは小さな付け火が薪に燃え移り炎となり燃え続けるのか。果たして、この答えは二〇一〇年までに判明するのであろうか。
東西冷戦の終結、IT技術の進歩による通信コストの低下、輸送コストの低下は世界経済のグローバル化を生み出した。この流れを元に戻すことはできないと思われる。企業の大小にかかわらず、このグローバル化の波の影響を受ける。特に我々のような中小は大きな横波を受ければ一発で転覆する。横波から身を守るには波を切って進むしかない。グローバル化の波に正面から向かっていく覚悟が必要である。クリスマスイブに上海の街の灯を眺めながら思いを馳せた。
(次回3月号は、潟Cズミック 代表取締役社長 盛田 宏様にお願い致します。)


