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「物づくりと生産性」

大豊工業株式会社 取締役社長 福間 宣雄(ふくま のぶお)

昭和15年1月25日生まれ
昭和38年3月 東京大学工学部航空原動機科 卒業
平成04年9月 トヨタ自動車工業株式会社 入社
平成02年9月 トヨタ自動車工業株式会社 取締役
平成08年6月 大豊工業株式会社 取締役副社長
平成09年6月 同社 取締役社長(現在)

 物づくりを賞揚するのはよいことだ。自然の材料に手を加え、生活に便利なものにつくりあげる。石器時代から受け継いできた本能というべき喜びがある。二足歩行で手が自由になり、手を使うことで脳が発達し、その意味では、「手は道具に先行している」
 物づくりというと、手の枝の方へ行くのはやむを得ない。技能や匠の枝に対する素直な礼賛となる。もちろん、道具や設備の使い方を含んではいるが。しかし、この「手工芸崇拝」は産業革命以来、圧倒的な機械の力によって潰されてきた。カートライトの力織機の出現は、あっという間に機織職人を不要にした。このような機械力との勝ち目のない争いが、彼の地ではほぼ200年に亘って続いた。その後遺症が今でも欧米あって、一部の設備至上主義になっているのかも知れない。
 一方、産業革命を経験しないわが国では、明治の中頃まで職人の技が産業の中心であった。その後、欧米の文明に驚歎した人々は、反対もせずに舶来の技術と設備を導入した。しかし、何処あれ程黒船に驚愕したのか?また、何処あれ程必死に欧米の設備を導入したのか?当時のわが国には、手道具とそれらを使う技能以外に見るべきものはなかったのではないか?
 「日本の兵器は、この程度でいい」という日本帝国陸軍の無意識の規定は、陸軍の消滅まで続いたそうである。機械力の不足は精神力で補おうというのか、戦争の短い間ではさして進歩はないので、その使い方に徹しようとしたのか。いずれにせよ、この発想は陸軍に限らず、たとえば生産性の競争の場などにもありそうである。道具や設備の性能向上よりはその使い方という性癖は、確かに私たちの中にある。
 このルーツどこにあるのか?どうやら、それは江戸時代にまで遡るらしい。徳川幕府は兵器だけでなく、ノミやカンナ、駕籠などに至るまで、あらゆる道具の様式を凍結し、諸道具の開発は国家に対する最大の罪悪として禁じたのである。静的な社会の安定にとって、生産性の向上は悪であり、それを禁じることで体制を守ろうとしたのである。
 真の物づくりは手の技と同様に、道具や設備の能力の進歩にも向かわねばならない。そして、物づくりはこの点では生産性と出合わざるを得ない。実際に経済学では、(労働)生産性は設備生産性と労働装備率の積(掛け算)で表される。設備生産性は、設備一台当り、単位時間当りの産出であるが、値段の高い設備も安いものもあるので普通は一台とするより設備の単位価格当りとした方がよい。労働装備率は、そのような設備を一人で何台持って操業できるかであり、ここに設備と人の働き方の工夫が問われている。
 以上をまとめて、生産性も考えた物づくりについて、次の結論は正しいであろう。まず、設備とそれを使う人の間をつなぐ工夫は、常にどこまでも続けられねばならない。その中で、「常備は設備の本来の使命に向かって、また技能はそれらを使いこなす本来の技の追求に向かって進歩しつづけねばならない」

(次号8月号は、高島屋日発工業(株)取締役社長野田直樹 様にお願いいたします。)