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会報

「経営シンポジウム中部2006」 〜職場のリーダーの育成〜

 10月5日、名鉄ニューグランドホテルにおいて「職場のリーダーの育成〜企業の明日を支える人材力の強化〜」をテーマに経営シンポジウム中部2006を開催しました。今回で21回目となるこのシンポジウムは、愛知、岐阜、三重3県の経営者協会で構成する中部経営者協会がトップセミナーとして年1回開催しており、当日は3県の経営者や人事担当者ら約170名が参加し、各講師の話に熱心に耳を傾けました。

はじめに

 企業が生み出す価値を高めていくには職場の力の向上が不可欠である。雇用形態の多様化、コミュニケーション不足など、職場運営がますます難しくなる中で、リーダーには周囲を率いて職場の力を高め、成果を生み出すキーマンとしての役割が求められる。そして、そのような職場のリーダーの育成は企業にとり非常に重要な課題となっている。
 今回のシンポジウムは、人材育成に積極的に取り組んでいる企業の実例を通じ、職場のリーダー育成のあり方を模索することを狙いとして開催した。
 開会にあたり岡部会長から「景気は順調に回復してきたが、人手不足、米国経済の先行き不安、原材料価格の高騰、金利の上昇気配など、不安定要素も多く、決して楽観できる状況にはない。この時期に就任した安倍総理には、強いリーダーシップを発揮し、さらなる改革のため、具体的展開・道筋づくりを期待したい」との挨拶があった。

基調講演 〜「企業の競争力と現場リーダーの育成」〜

基調講演では、名古屋大学大学院経済学研究科助教授の山田基成氏に、変化に対応する経営と、経営層の意思を現場に伝えるリーダーの役割などについてご講演いただいた。

 山田氏はまず近年の経営環境として、高い技術力だけで高い競争力を維持することは難しいと指摘。業界内での変化スピードを自らコントロールしていくこと、ものづくりにおいては素材、機械、人材3つの経営資源の融合によって競争力を発揮すること、特定の分野に特化し、限られた分野であってもトップ企業としての競争優位性を発揮していくこと、そして収益を上げる新たな事業モデルを構築することが、現代のビジネスにおいては重要度を増していると述べられた。
 続いて、全トヨタ労連傘下のメーカーとその従業員を対象に実施したアンケート結果を紹介しながら、困難な環境の下で経営戦略の実行者としてのリーダーの役割について言及した。
 現場での強みの発揮のためには、変化創出の仕組みと従業員のスキル・意欲を高めていくことが重要であるとした上で、部下の技能スキルの向上と意欲を引出すことがリーダーには求められると指摘。アンケートからは部下の能力育成について必ずしも十分ではないという結果が現れたが、本来の管理・指導業務以外の仕事が多いリーダーほど、部下育成に不十分さを感じていることを示された。また部下の意欲を高めるには、会社の経営方針を職場の目標と結びつけて伝えることが重要であると指摘した上で、ここでも管理・指導業務を主体としているリーダーほど部下の意欲を高め、不安を取り除くことができているという結果を示され、リーダーとしての業務に専念できる体制作りを経営サイドとして考えていくべきだと強調された。
 最後に、次々に生じる環境変化要因に対して、各職場が自らの問題として捉えて対処し、その困難を次期リーダー育成の好機と捉えていけるかどうかが、今後の企業の成長可能性を分けることになると述べられた。

パネルディスカッション 〜「価値を生み出す『職場』を支えるリーダーの育成」〜

 パネルディスカッションでは、オークマ株式会社(愛知)取締役人事部部長の坂下成夫氏、アピ株式会社(岐阜)取締役総務部長の国島博行氏、東邦液化ガス三重株式会社(三重)取締役相談役の江崎俊夫氏がパネリストとして登壇。山田先生のコーディネートで、職場リーダーに求める役割や職場リーダーの育成への取り組みの中で各社が最も重視していることなど、様々な視点からリーダー育成についての意見が交わされた。

 坂下氏は、典型的な多品種少量生産の業種であることから、リーダー育成は一朝一夕にはいかないが、リーダーには時代の変化の中で果敢に挑戦することが必要と述べられた。また、社内技術・技能競技大会について触れられ、大会に向けて、事前に職場で若手に対して行う教育が、リーダー育成の機会としても役立ち、結果としてコミュニケーション活性化にもつながっていると紹介された。
 国島氏は、OEM受注のための顧客ニーズ汲み上げから生産部門への対応までの全プロセスを担う提案営業において、体験・経験の中で商品の提案方法を工夫することを重視していると述べられた。また、ベテランが作り上げた営業スタイルを若手に伝えていく方法を模索中であると述べられ、専門分野だけでなく総合的に判断するところが課題であると述べられた。
 江崎氏は、保守・点検業務が中心であり、事故等緊急時の迅速な対応が最重要であるが、平素優秀とされる者がいざとなると的確な判断力を失ってしまうことが多々あることに触れられ、会社への愛着を持ち、 地道に自己の仕事に取り組む者に育成の力を入れていきたいと述べられた。
また、敢えて一番難しい課題に取り組む気概のある者をリーダーとして育てたいと抱負を述べられた。

特別講演 〜「サーバントリーダーシップと企業の社会的責任」〜

 特別講演では、株式会社資生堂相談役の池田守男氏から、自らの人生観に基づき、経営層はもちろん、現代社会に生きる者としての心のあり方についてご講演をいただいた。

 池田氏は、薬師寺の元管主の高田好胤氏の言葉「物で栄えて、心で滅ぶ」をまず紹介され、昨今の自己中心的、利己主義的な風潮、金銭的価値や物欲にとらわれた価値観を挙げ、戦後日本が経済的な成功の陰で、公の精神や倫理観を喪失してきたことに危惧を示された。また、日本人にはもともと他者に対する思いやりや奉仕の精神、自然に対する優しさが脈々と受継がれてきたと指摘。「感謝の念」「社会のお役に立ちたい」という心を、もう一度取り戻すことが大切であると述べられた。
 続いて「天地のあらゆるものを融合して新しい価値をつくり、その新しい価値を社会にお役立てする」という資生堂の創業精神を『台木』に見立て、新しいマーケティングを『接ぎ木』することを考えたと述べられ、お客さま・販売店・資生堂の三者が出会う店頭を基点とした経営改革の断行と、それを見える形にした、社長が一番底で会社を支え奉仕する『逆ピラミッド型組織』について紹介された。
 また、ここ数年CSRが大きく取り上げられているが、こうした精神は日本にも古くからあるものであると指摘。近江商人の「三方よし」(売り手にも買い手にも良く、それが社会全体のためにもなる)、石田梅岩の「先が立ち我も立つ」(お客さまの喜びが自分の喜びである)、という考え方が最も大切な心のバックボーンであり、日本の企業活動の原点であると述べられた。
 最後にこれからの時代は全ての人が全員参加社会の実現を目指すべきであるとし、社会と接点を持つことが生き甲斐そのものであり、その根底として「奉仕」の精神を持って、他者や社会に対して「与える喜び」を感じていくことの大切さを訴えられた。