特集 「成果主義人事制度を考える」〜成果主義のゆくえ〜
今回の特集では、『成果主義人事制度を考える』〜成果主義のゆくえ〜と題し、企業にておいて導入が拡がる、成果主義人事制度について考えます。
最近‘成果主義人事制度に対する批判的な議論’も出てきておりますが、こうした議論に対して‘本来の成果主義とはどうあるべきか’‘なぜ企業が成果主義の人事制度への改革が必要であるのか’を専門家に解説していただき、今後企業が導入していくべき人事制度について展望します。
また、成果主義人事制度をいち早く導入し、有効に機能させ、成功をおさめている武田薬品工業様の事例もあわせて紹介します。
「顧客基準」人事・賃金制度にブレークスルーを起こす
株式会社プライムコンサルタント 代表 菊谷 寛之
自営業者と会社の従業員のちがい
「人」が「仕事」について「成果」を生み出し、それが「顧客」に「評価」され、売り上げ・付加価値を実現するというのが、すべてのビジネスに共通する流れである。
例えば、自営の農家、商人、職人、フリーランス、税理士などのいわゆる個人事業主にとって、仕事の成果がどれだけ顧客に評価してもらえるかが稼ぎに直結することは自明のことだ。どのような顧客を持ち、顧客にどのような価値の商品やサービスを提供できるのかという腕前、技術やノウハウ、そして看板や暖簾、信用が彼らの生活基盤になる。
彼らは顧客に評価してもらえる仕事の成果を実現することにエネルギーを集中し、その売上がストレートに稼ぎ=報酬に直結する。個人事業主は本質的に「顧客志向」であり、「成果重視」の実力主義的な働き方になる。
成功すれば大きな見返りがあるかわりに、失敗してもすべて自分の責任である。どの程度仕事のリスクをとり、どのようなリターンを狙うかも含めて、彼らは自分のやり方で事業を続けていく。サラリーマンのように就業規則に縛られたりはしないが、仕事の規律は自分で守らねばならない。究極の働き甲斐の世界がここにある。
会社の事業の場合はどうか。ある事業主が粗利益の一部を人件費にあて、人を増やして、事業を大きくしようと考えたとする。それまでの家業的な組織は使用者と労働者とに別れ、事業主は「従業員」に「賃金」を払い、その労働を管理しながら、顧客に対して組織的に商品・サービスを提供する形態になる。つまり個人事業から会社になり、事業主は「経営者」になる。 経営者は、従業員と労働契約(就業規則)を確認し、約束の労働時間を勤務して与えられた「仕事」をこなして期待された「成果」を実現させるように人事管理を行う。従業員は要求された仕事の労役を提供し、その対価として労働時間分の賃金を受け取る。これが民法でいう「雇用契約」の関係である。
ここでは「請負契約」のように仕事の成果と報酬とを取引しているわけではない。個々人の仕事の成果はいったん会社のものとなり、組織的に会社の商品・サービスへと統合され、最終的には顧客に評価されて会社の売上を実現する。仕入を除いた粗利益から賃金や経費を支払い、残りの「営業利益」が経営者の手許に残る。 すでに見たように自営業者の場合は、毎日の仕事の成果は自分の稼ぎに直結し、顧客の評価に最大の関心を払いながら事業を行っている。しかし会社の場合、従業員は成果と切り離されているために、仕事の成果の重要性を従業員に理解させることはなかなか難しい。
従業員は「仕事に対して賃金を貰っている」という意識になりやすく、与えられた仕事は大事にしても、成果に対して経営者のような深い関心を払うことはない。自分達の価値尺度だけで仕事のよしあしをとらえがちになる。顧客志向で働くことの意味を理解できずに仕事の質が低下したり、生産性を軽視して賃金に不満が生じたりする。これではいくら人数が増えても、個人事業主のようにこだわりを持って仕事をする真のプロフェッショナルはいなくなる。顧客志向や成果重視の姿勢で仕事をすることができない組織になってしまう。
年功給、能力給、職務給ではなぜだめなのか
年功給、能力給、職務給というこれまでの伝統的な賃金決定のしくみは、いわば仕事の成果とは切り離されたところで従業員の処遇基準を決め、賃金を配分する考え方である。このような方法で賃金を支給し、それが衛生要因(ないと不満になるが、充足されれば気にならなくなる)になってしまうと、従業員の成果に対する無関心は一層助長される。
経営者がいくら顧客志向や仕事の成果の重要性を理解させようとしても、彼らの胸には切実に響かない。
例えば、年功賃金はなぜ良くないのか。最大の理由は、その人が実際に担当している仕事や発揮している実力と、賃金の値段づけが合わないことだ。
年功賃金は、若い人たちにとって、いずれは先輩たちのような高い給料をもらえるという「期待感」に基づいて、いまの低い給料を納得させている。賃金の高い先輩が若手より質の高い、価値のある仕事をしているとは限らないが、普通の社員は毎年給料が増えることの魅力には逆らえないので、目をつむるだけだ。
いいかえると年功賃金は「君たちは仕事の成果に真摯に目を向ける必要はない」というメッセージなのである。こういう賃金制度のもとで、いくら顧客満足を説教しても、普通の従業員にはピンとこないのが当たり前だ。それよりもいつ昇給させてもらえるのか、というほうがより大きな関心事であろう。
では能力給にしたらどうか? 職能資格制度では、仕事の中身を記述可能な「課業」の集合体と捉え、それがこなせるように社員が習熟すれば能力の資格も上がり、給料も増えていく。一見、図式としては美しく、学校で一生懸命勉強してきた優等生には分かりやすい仕組みだ。 しかし会社は学校ではない。会社とは、限られた経営資源を効果的に投入し、顧客が要求するシビアな品質や納期、サービス、価格などと折り合いをつけて、いかに顧客満足を実現していくかという、厳しい戦場のような場所だ。会社で決められた職務の階層秩序に従って仕事を覚えていけば、給料が増えていくというのは非現実的な机上の論理ではないだろうか。処遇(資格)と配置(仕事)とを分離する職能資格制度に独特のロジックも、目先の人事配置のしやすさを優先し、仕事の価値(成果)に目をつむって、年功的な処遇に免罪符を与える結果となっている。
その意味では、職務給のしくみも大同小異だ。仕事を細かな職務等級に区分し、市場価値に基づいて値づけする欧米の職務給は、仕事の捉え方や賃金決定のロジックがミクロ的で硬直的すぎる。仕事の責任範囲は「労働契約書」や「職務記述書」に書いてある通りで、賃金もそれで決まっている。「仕事で給料は決まっているはず。なぜ成果や顧客の評価まで自分が心配しなくちゃいけないの?」というのが普通の反応だろう。それよりも今の仕事がいつまで続くのか、もっと賃金レートの高い仕事にならないか、というほうが関心事である。
現実には、仕事を覚えたとか、その仕事を行っているからといって、必ずしも能力を発揮(パフォーマンス)しているとは限らない。その人が実際にどういう成果を出し、顧客満足を実現しているかという部分こそが、仕事の「本質」であり、それはすべての従業員に課せられた責任だといえる。そこが能力を評価する最大のポイントでもある。
「顧客」基準で、評価・賃金にブレークスルーを起こす
従来型の人事・賃金制度の欠陥を打破するものが「顧客」の存在である。ドラッカ?は「成果は外部にある」といっているが、どんな企業でも、最終的にその企業を支えているのは顧客であり、彼らに価値を提供する従業員がいて経営が成り立つ。会社の中の年功や能力、仕事などの「内部基準」ではなく、外部つまり顧客に対してどれだけ価値のある商品やサービス、行動を提供できるかという「外部基準」に基づいて、実現すべき成果を再定義し、その実現に向けて従業員を内発的に動機づける必要がある。そのためには、仕事の出来ばえをきちんと評価し、処遇に分かりやすく連動させることのできる制度環境が必要だ。
恐らく、本当の意味での成果主義が目指していたのは、この部分だろうと思う。ただ残念ながらいま巷に流布している多くの成果主義は、顧客基準をうまく盛り込んでいない。
成果主義というと、どれだけ売った、どれだけ生産したかで従業員同士を競わせることのみに目的を置いた類の、会社の内部から見た成果があまりにも多い。これでは、昔の「出来高歩合給」と本質的に変わらない。この考え方の評価システムは、むしろ顧客不在を招く。形を変えた「内部基準」による人事制度であり、ただ単に内部的な業績基準にモノサシを変えただけに過ぎない。
重要なのは、われわれはどういうミッションの下で活動している会社なのか。また、われわれのミッションは顧客にどのような価値を提供することなのか。そのためには、どのような成果を実現して、どのように成長したらいいのかを、皆で議論していくなかで、評価尺度をつくることである。これを常に従業員に問いかけ、納得してもらえれば、世間で批判される“金”や“ポスト”だけの成果主義にはならないはずだ。
内発的動機づけを組織的なチャレンジに結びつける
人は“金”や“ポスト”だけに仕事の価値を見出しているわけではない。
内発的な動機づけを考えると、むしろ自分の力を仕事に発揮できるという自信・手ごたえや自分でコントロールできる仕事そのものの面白さ、困難な課題にチャレンジしてやり遂げる達成感がやる気を大きく左右する。
働くことで人に頼らず自分の力で生活できるという自立感や、組織に属して仲間と一緒に仕事ができる、組織の中で顧客に向き合い人の役に立てている、仕事の経験を通じて成長できる、という手ごたえも組織へのコミットを高める。
そもそも会社とは、このような内発的な動機づけの場を個人に提供し、単独の個人では成し得ないことに組織でチャレンジできるから会社なのである。このような能力のインキュベーションと組織のパフォーマンスを結びつける機能を持たない人事制度は長続きしない。
会社が常に新陳代謝を図り、新人を次世代の担い手として育成していくには、重層的な能力構造が必要だ。アマチュアをセミプロに、そしてプロヘと鍛え上げていくという能力開発、キャリア開発を通じて長期的な会社と個人との「信頼関係」が築かれていく。それが人の心をつなぎとめる「求心力」となって長期的な組織の維持・成長が可能になる。
そこを、これまでの成果主義の人事制度はきちんと見ていないように思う。実際の現場を考えても、顧客志向を持った真の意味でのプロヘと成長するには、現場での経験の積み重ねに加え、時には失敗や回り道もあるし、一見「ムダ」なこともやらなくてはならない。これまでの成果主義は現場での重要な「プロセス」だとか、真剣な「思い」を無視してしまい、近視眼的で狭い評価基準しか設定していない。
さらにいえば、人の配属を決め、仕事を与え、その方法やプロセスをサポートし、仕事の出来ばえを評価し、本人にフィードバックする個々の人材マネジメントも、まだまだ従来の年功・人基準の人事制度のやり方を引きずっていて、顧客志向で成果を実現しようという考え方が甘い。人の経験・能力と仕事・成果との両方をもっと丁寧に追い求める必要がある。
これからの賃金・評価制度のありかた
景気が回復して賃金支払い能力が出てくると、再び年功賃金でもよかったのではという風潮が必ず出てくる。
しかし従業員に顧客志向を浸透させ、成果に対して忠実な従業員が多数を占めるようにするためには、日々の顧客の評価や仕事の成果が賃金に連動することを従業員に肌身で理解させる人事制度に切り替える必要がある。これまでのように顧客と従業員との間にカーテンを引いてしまうような賃金のしくみは、廃棄されねばならない。
筆者は、大ぐくりに従業員の組織的な役割や成果に対する責任を5?6等級に区分し(責任等級制、図表1参照)、ブロードバンドの賃金表に基づいて従業員が発揮する実力に基づいて賃金の絶対額管理を行う手法を推奨している。賃金よりも高い実力を発揮すれば昇給するが、賃金と実力レベルが一致したらそこで昇給停止となる。もし賃金よりも低い実力しか発揮できない時はマイナス昇給も行う。
このような賃金制度のもとで、仕事の成果に対する顧客の評価を従業員に継続的にフィードバックし、経営者と従業員とが仕事の問題点や課題を常に共有するようにしなければならない。
次に、一人ひとりの仕事の創意工夫や改善努力が顧客の支持を獲得し、その集積が事業の成果となり、会社の財務や収益が決まることを、具体的な数字や事実を通して従業員に伝える必要がある(企業業績の開示)。
そして事業の成果に連動して会社全体の賞与や賃金の原資が決まることを理解させる必要がある(総額人件費管理)。
このように情報を開示して成果に連動した報酬のしくみを実施すれば、従業員も会社の収益や毎日の仕事の成果には無関心ではいられない。また仕事の出来ばえをきちんとフィードバックしていけば、自然に自分達の仕事の成果をどうやって高めていけばよいかを、自分の頭できちんと考えるようになる。
自営業者と同じように自分達の仕事の成果が顧客に評価されていることや、仕事を通じて社会に貢献していることを実際の報酬を通じても実感できれば、従業員は仕事の厳しさを含めた、より一層大きな働き甲斐を体得できるようになるはずだ。真の従業員満足を実現するためには、わかりやすい情報開示とそれを実感させるような賃金決定と評価のフィードバックのしくみが欠かせない。
武田薬品工業の取組み〜現場ではどのように機能しているか〜
武田薬品工業株式会社 人事部シニアマネージャー 阪口 克己
成果主義人事制度導入の背景
医薬品業界では、政府の医療費抑制政策の強化等もあり、今後ますます厳しい時代になって行くと予想されている。そのため、国内だけでなく、海外での売上を伸ばしていく必要があるが、欧米では大企業の合併が相次ぎ、巨大企業が続々と誕生している。「研究開発型国際企業」として国際競争に生き残る体制を作るには、体力のある今が最後のチャンスという強い危機意識を背景に、新しい人事制度を構築した。 国際企業として多国籍化していくために、国際標準(グローバルスタンダード)に適合した制度ということを念頭に、次の基本方針に基づき、評価・昇進・給料・賞与・退職金等すべての制度を抜本的に改定した。
〈制度改定の経緯〉
1993年 4月 幹部社員業績目標管理制度
1994年 4月 経営幹部の目標管理
5月 企業風土調査
1995年 10月 APS・行動評価制度(幹部社員)
1996年 7月 賞与支給基準方法の改定(幹部社員)
1997年 4月 給与・昇進・退職金制度の全面改定(全社員)
2003年 7月 賃金体系の全面改定(全社員)
〈制度改革の基本方針〉1997年
●評価制度
−透明度・納得感の高い評価制度を確立する−
@評価項目・評価基準を公開する。
A上司が部下との話し合いを通じて、評価をフィードバックする。
●報酬制度
−成果重視の報酬制度を確立する−
−成果を重視し、やった者が報われる報酬制度を構築する。
−年功的要素をできるだけ払拭し、より職務レベルを反映した報酬体系を構築する。
当社が考える成果主義と導入の目的
@成果主義に対する批判について
○成果主義には、全ての会社に通用する決まったパターンがあるわけではない。成果主義がうまくいかないというのは、その会社に合っていない人事制度であるということに過ぎない。
○その企業に最適の成果主義はその会社のマネジメントスタイル(トップダウンかボトムアップか等)や業種等の環境で変わってくるものである。極端に言えば、年功序列による成果主義というのもあり得ると考えている(ほとんどの日本の会社はそういう状況には無いとは考えている)。
○要は成果主義(人事制度)が先にあるのでは無く マネジメントをどう行うかが根幹にあるということである。
A成果主義制度導入の目的
○成果主義の本来の目的は、「全ての組織構成員が組織の最適化を常に追求している状態を創出し、成果指向性の高い行動を効果的に引き出す」ことにある。これにより、組織の自律的成長を促し、競争力を高め、収益性を向上させる。
○新人事制度はこの成果主義を定着、促進させるためのツールであり、組織にとっての目標を効果的かつ効率的に達成するために採られる行動と、どのような結果が生じたのか(目標が達成できたかどうか)、について重視する。
○成果主義の目的は単なる人件費の配分ルールの見直しではない。ビジョンなき人件費削減は社員のメンタリティを下げるだけである。
○当社のマネジメントスタイルは徹底したトップダウンである。トップダウンに合ったマネジメントシステムとして、目標管理制度を導入した。
○目標管理制度を実際に機能させるためには、日本の旧来の人事制度は障害になることが多い。その際には徹底的に改革を行った。職務給や評価の改革が先にあったわけでは決して無い。
○しかしながら目標管理制度だけでは、短期主義に陥りやすく、長期的に成果を上げる組織を作るのは難しい。それを補完するひとつの手
目標管理制度の課題とと機能させるため対応策
(課題1〉
能力の高い人ほど難しい目標を立てるので、不公平になる。全員が、達成可能な目標を立てようとする。
→〈対応策〉役割(アカンタビリティ)を明確にし、職務給へ移行。(幹部社員の職務等級)
○純粋にHAYポイントだけで決定。
○職務記述書は作らず、独自のアカンタビリティーマトリックス方式で、評価の方法は簡略化。月例賃金はシングルレート(職務等級別定額)として、同一価値労働・同一賃金を徹底する。
○ (組合員の職務等級)
○アカンタビリティ+コンピテンシーで決定。
○学歴・卒年・分布を考慮しない絶対評価。
○上司に自己申告し、フィードバックされ、ブラックボックスの無い仕組みとする。
○組合員レベルでは、新卒者の成長を促す育成型の仕組みが必要と考え、職務だけ見る純粋な職務給とはしていない。
〈課題2〉
最終的には、評価結果が“相対評価”になり、部門も個人もしらけてしまう。
→〈対応策〉絶対評価を実現する報酬制度へ移行する。(部門の業績と人事考課がリンク)
○職務等級間・考課間の格差をポイントテーブルで設定のうえ、各部門の考課分布に応じてポイント単価を算出して金額テーブルを作成する仕組みにより、目標管理の絶対評価をそのまま賞与評価とする。
(課題3〉
上級幹部が部下にまる投げしている。
→〈対応策〉上級幹部も例外なく、目標管理制度の対象者とする。(聖域を作らない)
○各部門長が真剣に取り組まざるを得ないようなシステムを構築する(部門長にも目標管理を実施)。
○明確な基本計画(達成すべきハードル)の明示と浸透。
○達成責任の明確化(信賞必罰)。
○部門長にある程度のインセンティブ権限を与える(考課は各部門に任せる、特別賞与は自由に)。
〈課題4〉
評価の際に努力度を考慮し、成果があがってなくても評価してしまう。
→〈対応策〉マネジメントサイクルを正しく回す。
○結果イメージ(期末にどのような結果になればよいか)を上司と部下で共有し、PLAN→DO→SEEのサイクルを正しく回すことが重要。
評価はあくまで厳格に行った後に、育成的フィードバックを行う。
〈課題5〉
毎日のオペレーションやチームワークが何よりも大切なのに、目標管理のために大事な仕事がおろそかになってしまっている。
→〈対応策〉 目標管理制度の対象を限定する。組合員・管理職という区分ではなく、仕事の性格で考える。
○営業職・研究職成果達成の個人差が大きいため、「どのくらい働いたか」ではなく、「どのような成果をあげたか」に意識を変えることにより、目標管理が馴染む。
○一般的な事務職・工場技能職
期待される成果の達成が比較的確実なため、目標を設定しても、「全員が達成」となるだけで、目標管理は馴染まない。
目標管理制度を補完するコンピテンシー
@コンピテンシーによって排除できる、誤った評価
○再現性のない成果(偶然の成果)を排除成果から単純に逆算することなく、「成果をあげる過程で、その人はどんな行動を発揮したのか」を徹底的に確認する。
○評論家タイプ(外見的に頭が良さそうに見える人)を見極める。
声の大きい人、目立つ人が評価されることはない。コンピテンシーであれば、本当に成果をあげている人が評価される。
○上司の主観(好き嫌い)による評価コンピテンシーは、顕在化した行動を評価するので、客観的な能力評価ができる。
Aコンピテンシーによる人材の育成
○会社が求める人材像を明示することで、コンピテンシー開発を促すことが出来る。
○無意識に「ただ仕事をこなしている」状態から意識的・計画的な行動が出来るようになる。
<武田薬品におけるコンピテンシーの活用>
○組合員の職務等級格付け
職務+コンピテンシーによる武田独自のポイントシステム
○幹部社員昇進時の選別
・コンピテンシーによる人材アセスメントを実施
・上位職務等級の昇進時にもチェック
○各種の研修に応用
今後の課題
○部門・職種の違う社員を全て同じ制度に当てはめていくことには、必ずどこかに無理が生じるものだと考えている。1997年に新制度を導入して以来、部門別あるいは職種間で発生した制度上の問題点に対し、一部柔軟には対処してきたが、今後はさらに部門、職種の実態に応じた制度や運営方法について改正していく考えである。
○現在も賞与に部門業績を反映しているが、将来的には、月例賃金にも業種・職種によって差を付ける方針である。職種別賃金を目指すのはコストだけの問題ではなく、優秀な人材が出てくる風土を作る目的もある。管理するためではなく、競争に勝つために改革を行っている。
○今後は、どちらかといえば、スペシャリストの育成に力を入れる。以前はローテーションを頻繁に行っていたが、今後は、職種別に採用し、同一職種内でキャリア形成を進める方向に切り換えていく。
○全員を横並びで育成するのではなく、一部の層に選抜型の経営幹部候補育成策を講じ、大多数の社員は、プロフェッショナルとして専門職の道を歩んでもらう考えである。
○一方で、社内公募制度の充実を予定している。業種・職種によって賃金水準が変わるため、本人が担当する仕事を主体的に選択できる仕組みは不可欠ととらえている。
武田薬品株式会社 会社概要
創業 1781年6月
資本金 635億円(2004年3月末現在)
売上高 1兆864億円(200年度 連結ベース)
事業内容 医療用医薬品、一般用医薬品等の製造および販売
本社 大阪市中央区道修町四丁目1番1号
従業員 7407名(男性5863名、女性1544名)(2005年1月31日現在)

