奥田 碩・日本経団連会長「平成17年年頭所感」
あけましておめでとうございます。
みなさまには、すこやかに新年をむかえられたものと、心よりお慶び申し上げます。
昨年5月に発足いたしました日本経済団体連合会も、会員のみなさまの多大なるご支援により、なんとか無事に新しい年のはじめを迎えることができました。年頭にあたりまして、あらためて深く御礼申し上げます。
昨年を振り返ってみますと、日本経済はデフレが進行する中で低迷が続き、海外に目を転じましても、米国の株価下落やイラク問題など不安定要因が拡大し、総じて産業界にとっては厳しい一年であったと思います。
とりわけ昨年は、新団体発足直後から、企業全般に対する信頼を失墜しかねないような残念な不祥事が相次いで発覚いたしました。わが国にとどまらず、米国でも、大型の企業不祥事が続発し、企業の社会的責任のあり方について、根本から考え直すことを迫られた一年であったと思います。日本経団連でも、こうした状況をふまえ、「企業行動憲章」の改定を行うなど、経営道義・企業倫理の刷新と確立に向けて、一段と強力な取り組みを進めているところであります。
こうした中で、東京大学名誉教授の小柴昌俊さんがノーベル物理学賞を、島津製作所フェローの田中耕一さんがノーベル化学賞を相次いで受賞されたことは、わが国科学研究の水準の高さを世界に知らしめる快挙であり、国民に明るい希望をもたらしました。とりわけ民間企業の技術者である田中さんの受賞は、わが国の産業人すべてにとって誇らしく、励みとなるものであったと思います。長期にわたる低迷の中にあるとはいえ、わが国の底力は、まだまだ捨てたものではありません。むしろ、経済の停滞が続くその奥には、行き場のないエネルギーが蓄積され、開放されるのを待っているのではないでしょうか。
経済・社会が地球規模で大きく変動する中で、かつては有効であったわが国のさまざまな制度や慣行の多くが、今ではこうした底力、エネルギーの発揮を妨げていることは、すでに周知のとおりです。たとえば、産学連携のしくみを作り直し、活性化させることで、新しい技術を新しい産業につなげていくことが容易になるでしょう。あるいは、潜在的に大きな需要のある育児・教育、福祉、健康サービスや環境関連ビジネスなどの分野における民間に対する参入規制を抜本的に緩和することで、これらの産業で民間の活力を発揮させ、需要を顕在化させ、雇用を生み出していくことが可能になるでしょう。こうした取り組みを通じて、わが国に新たな力強い発展をもたらすことが、「構造改革」にほかなりません。今年こそはこうした「構造改革」の実行の年にしなければなりません。
そのための指針として、日本経団連は、新しいビジョンを作成しました。改革を断行するには、既得権や権限を守ろうとする勢力に抵抗を許さない、国民の総意が不可欠です。そのためには、大多数の国民の共感を得られるビジョンが必要です。新しいビジョンは、「多様性」と「共感・信頼」をベースに、個人の多様な生き方を尊重し、そのエネルギーを生かすことを提言しています。この新しいビジョンに、多くの国民の支持を得たいと念じております。
小泉内閣に対する高い支持率は、そのまま国民の改革への期待を示すものといえます。自ら率先して痛みを受け入れ、改革に取り組むことが、リーダーに課された使命です。この決意を会員のみなさまと共有し、日本経団連が一丸となって改革に邁進する決意を申し上げて、新年のあいさつに代えさせていただきたいと思います。
(以 上)
新年あけましておめでとうございます。
愛知県経営者協会 会長 柴田昌治
2003年の新年を迎えました。会員のみなさまには良いお正月をお迎えになられたものと思います。本年も経営者協会の活動に一層のご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
年頭にあたって今年の新しいキーワードを、と思いましたが、やはり今年もまた「構造改革の実行」「国際競争力の回復」の二つが中心、ということに落ち着きました。
構造改革の必要性については、昨年大いに沸騰した規制緩和や民営化の論議を通じ、もはや国民各層に共通の認識となりました。あとは何がこれからの国民の利益に適うのか、既存の枠組みにとらわれずに正しい選択をして、早く実行に移すことが今年の第一の課題だと思います。
一方、経済のグローバル化が一段と進む中で、何をもってわが国の強みとし、国際競争力の源としてこれをどのように育んでいくのか、こちらにも大きな決断の時が来ています。
スイスの国際経営研究所(IMD)は、日本企業の技術開発力はまだ国際的にトップランクにあると評価していますが、この貴重な資源を日本復活の原動力としていくためには、国をあげての戦略的な対応が必要です。産学官の連携をより実効あるものとし、税制面からも企業の研究開発を後押しすることはもちろんですが、長期的に見た人材の供給、すなわち学校教育の充実や海外からの優秀な人材確保のための条件整備も今年の大きな課題です。
また、海外の先端産業の誘致に必要なインフラの整備、規制緩和や大胆な財政援助など、公共投資や産業政策の面でも見直しが必要です。あらゆる機会をとらえ、文字通り政策を総動員して、わが国の国際競争力を高める策を考え、実行していかなければなりません。
ほとんど全ての県に空港がある一方で、国際空港に関しては近隣諸国に比べて著しく立ち遅れてしまっているように、これまでわが国では、限られた地域や地方でのニーズを優先して国家的な決定が行われてきた面がありました。しかし、これからはその決定が国としての競争力を強めるものであるかどうかを尺度とした判断を求めていかなければと思います。
企業における賃金決定についても同様のことが言えます。もはや春の到来とともに一律に賃金を引き上げる「春闘」は、終焉を迎えたと申して良いでしょう。国内にのみ事業基盤を持つ産業の労使においても、これからは日本全体としての競争力への影響を意識した対応が望まれるところです。
昨年から日本経団連の副会長として主要な会合に出席する機会を得て、私は地方の重要性をいよいよ強く感じるようになりました。構造改革の流れを通じ、もはや「官から民へ」と同様、「国から地方へ」の流れは変えられないと思います。
地方の側にもこれからはより一層の責任と力強さが求められます。「国を支える地方」と言うにふさわしい、道州制などによる大括りの枠組みと地方の「核」となるべきものを新た考え、作り上げて行く必要があると思います。
われわれはともすれば国政レベルでの改革の遅れを嘆きがちです。しかし、一歩、国の外へ足を踏み出して見れば、改革の担い手は他ならぬわれわれ自身であることに気づきます。改革を推し進めるためにはまず、経営者自身が「変えるべきことを変える」という信念を持ち、実行していくことです。それがやがて社会を変え、国を動かして、国際的な信頼の回復につながっていくものと信じます。
今年が本格的な改革実行の年になり、みなさまにとりましてもより良い区切りの年となることを祈念いたしまして、新年のごあいさつといたします。

