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会報

2003年労組大会の特徴 ―追い詰められる労組浮き彫りに

労働政策研究・研修機構 主任調査員  荻野  登

 主要労組の定期大会がほぼ終了しました。そこで、今年の各定期大会における議論の主なポイントを、労働政策研究・研修機構 荻野 登氏から解説していただきます。

1.はじめに

 主要労組の定期大会は9月中におわり、新役員体制や運動方針を確認した。冷夏を反映してか、今夏の大会は全般的に議論に熱が足りない印象。とはいえ、春闘の行き詰まりに象徴される、組合運動に抜本的な改革を求める変化の波は、足元まで押し寄せてきている。組織率が今年20%を割り込むのは必至で、組織化が最大の課題に浮上してきたからだ。

2.03春闘の総括――賃金カーブ維持で評価

 まず、各組織が今春闘をどのように総括したかを振り返えりたい。そのまえに、主な賃上げ集計をおさらいすると、日本経団連は大手企業(185社)の平均で1.65%・5391円(前年1.59%・5249円)。厚生労働省の民間主要企業(105社)の賃上げ状況によると、昨年の1.66%を0.03ポイント下回る1.63%(額で5256円、前年比32円減)。連合の最終集計も平均賃上げ(639組合、125万人)でみると、率で前年比0.09ポイント減の1.63%(額で前年比294円減の5063円)となるなど、ほぼ昨年並み水準で収束した。
これらの結果に対して連合は、大手中心の3月内決着組については、「賃金カーブを維持し、経営側の賃下げ攻勢を跳ね返すことができた」と評価しつつも、4月以降の決着組には賃金制度の整備されていない組織も多いことから、「カーブ維持に届かない組合が漸増してきた」と総括。そのうえで「平均方式の賃上げ率は、賃金制度が整備されているかどうかで大きく左右され、制度の有無によって二極化している」と分析している。
ここ数年、連合は賃金制度のない労組が過半数にのぼるため、制度の整備を呼びかけてきたが、今春闘では制度の有無が大きく影響していること浮き彫りになった。この結果を受け、連合は、厚労省の「賃金制度整備事業」を活用するなど、賃金制度がない単組に対して制度確立を求める方針だ。
今春闘に関するこうした受け取り方は、「今年の賃上げ結果の評価基準は賃金カーブが維持できたかどうかである」(UIゼンセン同盟)、「賃金体系の維持は一定の評価ができる」(電機連合)、「定昇の実施は約束したもの守るという労使の信頼関係に基づくもの」(造船重機労連)などの総括や評価が示すとおり、主要産別にも共通している。

3.産別統合も着実に--基幹労連結成、交通4産別は予定組みなおし

 産別再編が具体的な形で結実したのは、9月9日に鉄鋼労連、造船重機労連、非鉄連合の3産別が統合し、誕生した「日本基幹産業労働組合連合会」(基幹労連)。約25万人(352組合)を擁し、規模では連合加盟産別で8位となる。「頼れる産別」をキャッチフレーズに、「さらなる金属産別の大結集」を目指すとするなど、数年前に頓挫した金属労協を軸にした大産別構想を改めて提起している点が注目される。隔年春闘に移行している鉄鋼グループとの調整が課題となるが、しばらくは各産別の運動を継承する部会別の組織運営となるため、来春闘から要求や交渉方法が大きく変化するわけではない。
 昨年12月に予定していた連合加盟単位を一本化する「JTF」(交運連合)の結成総会を延期したことで統合スケジュールが、白紙に戻っていた私鉄総連、運輸労連、交通労連、全自交労連の交通関係4産別は、それぞれ来年の定期大会で「04年連合加盟単位一本化、05年組織統合」の一括方針を提案することを確認した。この日程どおり進めば、一年遅れながら、再来年の夏には新たな交通運輸関係の産別が誕生する予定だ。しかし、憲法や国の基本政策といった根幹部分での組織間のすりあわせが進まなければ、統合話が解消にいたる可能性も否定できない。
連合傘下最大の自治労(約98万人)と連合系の全国一般(個人加盟の合同労組)が今後一年をメドに、組織統合に向けた話し合いの開始を確認したのも、今夏のトピックス。これとは別に「全水道」「都市交」とは、統合のあり方などを具体的に協議する機関を設置し、1年をメドに結論を出す方針で、自治労は総合的な公共サービス産別への脱皮をめざす。その自治労大会が3年越しで検討してきた新綱領「自治労21世紀宣言」が、採択に必要な3分の2の支持を得られず、否決されたのは、最大の珍事。裏金づくりなど一連の不祥事発覚で中断しつつも、3回の修正を加え、提案した宣言案だったが、階級闘争色の強い現綱領を維持したいとする勢力も根強く、本部案は否決。大会を中断し、続開大会を開催せざるを得なくなった。

4.来春闘の課題――産別基軸が明確に、中央はミニマム重視へ

 春闘での賃金要求については、産別が基軸、連合が調整役に、といった役割分担がより徹底することは確実だ。春季生活闘争のまとめで連合は「闘争の具体的な担い手は産別構成組織であり、連合は、調整と企画・立案を中心に担うことを基本にする」と強調。そのうえで、具体的な役割分担として、「賃金、労働時間などに関する具体的要求は産別構成組織が責任をもって設定することとし、連合はマクロの視点に立った基本的な考え方、および最低限のミニマム水準を示すとともに、水準については、生計費と賃金に関する検討結果を踏まえ、早急に結論を出すよう努める」と述べている。
 これを受け、自動車総連の加藤裕治会長は大会の挨拶で、「ベア要求が必要との考え方は04年に向けても維持するのが当然だ」と強調。新産別を立ち上げたばかりの宮園基幹労連委員長も「デフレ下においては、従来型の一律的なベアの実施は困難だが、高付加価値の製品を生み出す根幹である職場の活力維持を重視し、要求すべきは清々と要求することが重要だ」との考えを示すなど、相場形成役の金属労協幹部からは、来春闘のベア要求に前向きな発言が出ている。一方、その金属労協は、均等処遇をベースとした短時間正社員制度の導入を前提に、労働時間が年間1200時間の短時間正社員と、1800時間の従来型の労働者とを組み合わせることによって、1人平均の労働時間が1500時間となる新たなワークシェアリングを提案した。今後の具体的な取り組みが注目される。

5.企業別労働組合のあり方再考へ――非正規を含めた組織化が重要課題に

連合の評価委員会(中坊公平座長)が、9月11日に提出した最終報告では、企業別組合主義からの脱却や、パート労働者の均等待遇実現といった、連合運動の改革の方向性を提言した。これを受け、連合はこれ以上の組織率低下が、組合の存在価値に対する最大の脅威になるとの認識のもと、「総掛かり体制による徹底した組織拡大」「パートなど非典型労働者問題への対応強化」などを運動方針の柱に掲げる。組織化に本腰をいれざるを得なくなった労組の現状がより鮮明になったのも、今年の大会の特徴といえる。