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会報

デンソーの技能者育成の考え方とその取り組み

(株)デンソー技研センター社長
デンソー工業技術短期大学校校長    生駒  昇

日本のモノづくり脆弱化が懸念される中で、先ごろスイスで開かれた「第37回技能五輪国際大会」では、愛知県内企業3社から10名の選手が参加し、全員が入賞を果たしました。なかでも潟fンソーからは6名のメダリスト(金3、銀2、銅1)が誕生しています。
そこで今号では、古くから卓越した技能者の育成に積極的に取り組んでこられた同社の考え方とその取り組みについて、デンソー技研センター 生駒社長よりご紹介いただきます。

1.はじめに

 近年、日本の製造業が中国、ASEANなど低労働コスト諸国の台頭により、日本の強みであった「モノづくり」の国際競争力を弱めつつあることが懸念されている。
 その理由の一つは、20世紀後半、日本経済の復興期には、多くの製造企業で技術者と技能者が、競争力あるモノづくりの実現に、一丸となって努力し、モノづくりの現場でも技能者達のレベルアップ、そのノウハウの伝承を進め、力を強めてきました。その為、彼等は「モノづくり」を支える現場技能に誇りと生き甲斐を感じていた。それが大量生産方式の進展に伴って設備増強のみに傾注し、技能者達の力を軽視し、育成と伝承を怠る風潮が増えた。しかしその様な製造業では、最近の多種少量生産等への環境変化に対し、魅力ある新製品開発や現場の良品生産に必要な各職場固有の技能やノウハウ、更には、技術変革に伴う高度なハイテク技能に、従来、迅速かつ柔軟に対応してきた技能者達が、既に、その対応力や気概を弱めてしまったのである。
 この様に、日本の現場技能者のモノづくりに対する技能レベルや気概が、発展途上国の現場作業者と大差なく、差別化できなくなれば、製造品質やコストで競争力を失うのは当然である。

2.「モノづくり」を支える技能人材の確保

 競争力ある「モノづくり」企業では、技術者が、画期的な新製品を開発する時、高度熟練技能者が、その卓越した加工・製作技能を駆使し、新規の試作品を創作して技術者の高度な構想の具現化を図り、時には非常に困難であった計測や評価でも新規な方法を創出して、製品化や量産化の目途を立てることに貢献している。
 また量産準備段階で技術者の生産設備構想を、高度熟練技能者達が量産化のキーとなる新加工技術を具現化し、高度な製作技能で短期間に新機構で精密な設備の製作を可能にしている。
 そして製品の量産時には、設備の機構や機能を理解した熟練技能者達が正しい操作や的確な保全技能を発揮して、高い生産性と高品質な量産を維持している。また職場環境の変更や異常時には、高度で知的な判断技能を有する熟練技能者たちが、的確な対策や問題発見を独自に、あるいは技術者へ改善提案をして更に高い生産性や高品質の生産を維持している。
 このような「高いレベルのモノづくりを支える技能者達」は、操作マニュアルや作業要領書だけで動く、ただの作業者ではあり得ない。それは各企業において必要な技能分野とレベルを的確に把握し、そのための計画的な教育と訓練、さらには動機付けされた自己啓発等の取り組みによって高いレベルに育成された技能者達である。
 従って、今後、日本の製造業が、グローバルに「競争力あるモノづくり」の力を回復するためには、それらを支える技能者達の計画的な育成と伝承は、各企業が緊急に取り組むべき経営課題と思われる。

3. デンソーにおける技能者育成の取り組み

 会社創立から5年後の1954年には、将来の製造職場のリーダになり得る人材の育成を目的に技能者養成訓練(現在のデンソー短大工高課程)を開始した。当時の会社トップは、試作品創作や生産設備の製作ができ、高度な機械設備を使いこなす技能者の育成、訓練は、製品や設備開発技術と共に、モノづくり企業の発展の要と判断したのである。
 このポリシーは、以降も途絶えることなく、更に新製品や設備開発に貢献する高度熟練技能者育成の為に1963年に、技能五輪参加も開始した。また1966年に新技術への対応や判断技能を育成する高等専門課程を開始した。そして1987年には、電子・情報系の実践技術者を育成する短大課程を併設し現在のデンソー工業技術短期大学校へと拡充してきた。
 また、高度成長期に入り、技能系新入社員が大量に採用されるようになり、1976年に一般技能系社員教育としてモノづくりの基礎を育成する基礎技能研修を開始した。一方、製品や生産用設備のハイテク制御化に伴い、製造職場で必要な技能分野も新しい加工法や新技術に対応する技能へと拡大してきた。
 従って、工機マンや保全マンが、この分野に十分対応していける様に計画的に再教育できる高度技能研修を1983年に開始し、1984年には、技能教育センターを設立して、その研修コースやカリキュラムの見直し、拡充を図ってきた。
 最近では、各製造職場固有の技能教育および伝承体制の再構築も実施され、さらに生産性向上を目指し、設備の操作技能だけでなく、ある程度の自主保全や改善技能を有するオペレータ研修のレベルアップへと強化してきた。
 一方、デンソーでは、人材育成の基本的な考え方として、技能者の職能進展は公平に評価されて、適正な処遇に反映されるべきものと考えており、技能評価制度を早くから導入した。今では、全技能者の9割以上が技能検定の2級以上(1級、特級含め)の資格を持っている。その後1997年には、さらに高いレベルの技能のスペシャリスト認定を行うEX試験制度へと充実した。これらの技能評価制度は全技能職場をカバーし、人事制度とリンクされて技能者の昇格要件として定着している。これが技能レベルの継続的な向上に大きく結びついている。
 現在までに、技能者全員が技術革新や職場環境の変化に対して、それぞれの技能分野やレベルに応じて的確な取り組みが出来る様に、デンソーの各関係機能部、各職場とデンソー技研センターが連携して職能進展目標と評価制度を明確化した全社技能教育体系を構築してきた。
そしてデンソー技研センターが、デンソー本社人事部及び人材育成委員会の方針に基づき、各職場、各機能部と連携を取りながら、各世代に必要な技能教育と技能評価制度の質を更に高める改善をしながら、人材育成を計画的に継続実施している。

4. 今後の課題

 今後、デンソーがグローバル企業として更に発展するためには、55ヶ所の海外拠点もグローバル競争に勝ち抜くモノづくりが出来る様、技能者育成の体系や仕組みの移転とキーマン育成の現地化促進が必要である。その為に各拠点が技能者教育に効果的に取り組めるような技能道場の設置も進めたい。また現場の技能者達の貢献内容が認められ、達成感を感じられる場も拡大普及していきたい。その事例では、最近始めた「技能開発討論会」は、開発のキーポイントに携わった技能者が、貢献事例を発表する舞台で、技能者のモノづくりへの更なる意欲や達成感向上に結びついている。
  我々デンソー技研センターは、こうした技能者が意欲向上や、教育を受けてよかったと評価してくれる研修実施を目指して努力を続けたい。

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