これからの経営幹部育成の方向性
総合経営教育研究所 所長 鎌田 勝
経営の運命を左右するリーダーシップ
昨今の政治経済の激変を見るにつけ、その組織の幹部のリーダーシップの如何で大きく運命が左右される実例をいやというほど見せつけられている。
激変の時代には「変化には変化」で自在に対応しうる柔軟性が求められるが、「先手必勝」のリーダーシップが最も望ましい。戦略的に状況を先取りするには、先見力と決断力が不可欠である。
この力を持った幹部がどのくらいいるのか、何人育成しうるかで企業の運命が定まることは言うまでもない。これは古今東西変わらぬ大原則で、今に始まったことではないが、十年一昔どころか一年一昔、三ヶ月一昔で激変する加速度の時代だけに、その育成にもスピードアップが要求される。
人材育成は採用から始まるが、将来性を見抜く人間性の洞察でまず勝敗の第一段階が決まる。次いで仕事をどんどんまかせ、とくに有望な人材には困難な仕事をあたえるといい。幹部はトップの分身であるから、常にトップの立場で今を考え行動する人物はすばらしい。分身は「分身」であるから、トップの考え、心がわかる幹部ほど優秀である。
ある業界トップの企業では、社長が毎月社内報の巻頭に執筆するやや難解な文章を教材にして幹部研修を行なっている。社長は何を言おうとしているのか、何を求めているのかを社長の立場にたって考え、話し合うのである。つまり、ミニ社長をできるだけ多く育成しようとしているのである。
また、優秀な人材には一見左遷と思われるようなポストにつけるのも良い方法である。そこで落胆せず、ベストをつくし、改革に成功するような人物は得難い人材である。今をときめくトヨタの奥田会長はこうして光を放ち、抜擢されて今日を築いたのである。
幹部教育とは次のトップ教育である。今の時、年功や同族や学歴で抜擢するようでは、その企業の将来は知れている。
いま外資は日本の企業の社員はきわめて優秀だから、ダメなトップを変えれば必ず見違えるように良くなると虎視眈眈と格付けを意図的に下げ、買収乗っ取りを策している。
早いうちからの適性の把握
良かれと思って採用した人物でも、しばらく働いてもらううちに、リーダー適性とスタッフ(専門職)適性かがわかってくる。
そのためには、幹部候補者は、早いうちにローテーションをするといい。どんなポストについても、すぐに全体を把握し、急所をつかみ、人心を掌握し、まかせるコツを会得する人物はリーダー適性である。あるpストで、専門的な能力を発揮し、そこでは活き活きする人物はスタッフ(専門職)向きと言える。それぞれのコースで成長してもらうことが、企業にとっても、本人にとってもプラスになる。リーダー育成にはどんどん上位代行させるといい。これを上に対するリーダーシップだといってる企業もある。上位代行するほど見識は高くなってゆく。
ミニ世界企業として知られるM社では、分社化(独立法人化)をどんどん進め、部・課長どころか、係長クラスが一気に代表取締役社長に任命される。だから、幹部教育とは、いつ社長に任命されてもやっていける見識と能力を日常頃から身につけておくことが求められる。だからこそM社は不況などとは無縁のみに世界企業になり得たのだとも言える。
いま幕張メッセで世界最大の恐竜博が催されているが、あの巨大な恐竜がなぜ亡びたのか、まことに興味関心をそそられる。
どうやら生物の世界でも、企業の世界でも大きくなるほどダメになり、小さいものが元気よく環境の激変に生き残ることができるものらしい。現に日本でもアメリカでも巨大化した企業ほど、21世紀での存続が危ぶまれている。
できるだけ組織を細分化し、トップを任せ、自由度を拡大することが、危機突破のキメ手ではないかと思われる。今は構造改革という名の巨大な官僚化システムの打破の時代である。社会主義的な完了や完了思想の持ち主は21世紀には生き残れないと覚悟すべきである。暗記秀才のニセエリート、バカで無責任なニセ秀才を採用したがる企業に明日はないと思うべきである。そういう人間を採用したがる人事部の改革こそ焦眉の急であるまいか。
もっともきびしい相互評価
これからの経営幹部の育成制度は、当然従来のトコロテン方式年功制ではなく、選択性になる。しかし、その選択制度がオープンで平等でなければ絵に描いた餅となる。
そのためには、人物は評価が厳正で、公正であることが不可欠である。誰がどのような尺度で評価するか、評価しうるかがこの制度の急所である。
一部の上級者が評価すると、どうしても甘くなり、バランスを失する恐れが出てくる。「経営は上から見ると3か月たってもよくわからないが、下から見ると3日でわかる」という名言がある。また「十目の見るところ十指の指すところ」という中国の古諺もある。つまり、上司の眼をゴマ化すことはできても、同僚や部下の眼をゴマ化すことは至難という教えである。
従って、優秀な会社ほど相互評価を重視する。それも自己評価をまずさせて、それに上司の評価を加えることにより、評価は可能な限り厳正、公正なものとなってゆく。
ただし、これは大規模組織になるほど、難しくなる。やむを得ないことだが、細分化したグループ内でなら可能である。
それには、まず会社として、何をどのように評価するかの尺度を明示する必要がある。ある会社では人間の質を「次元」であらわし、次元表を作っている。次元とは「自由度」である。どれだけ、自由に、より高い次元のものを考え、行動してるかで判定する。
こうした尺度は合議で決めるのだが、それは各会社の自由であり、作ってみるとその会社の経営理念、経営哲学が歴然としてくる。結局企業の人材育成は経営理念で決まるということである。
こうした尺度を決めて、自己評価・相互評価をするのだが、下手すると修羅場になる。しかし、この場こそ最高の幹部育成の場となる。ちなみにこの会社では社長をも全員で評価するのだが、四次元だそうである。
(参考書「不思議な会社」鎌田 勝著、三笹書房知的生きかた文庫)
次元力評価(全人格度・教養度ともいえる)
| 次元 | 点数 | だいたいの目やす |
|---|---|---|
| いまだに自分の力が十分発揮できず、自分が生きるのに精一杯の男、まわりの男のことなど、とてもかまっていられない。 | ||
| 自分の力だけは、自分の仕事に出しきっている男。まわりの男にあまり関せず。 | ||
| 1名の先手の男と2人なら与えられたことを長期に亘りこなす男。 | ||
| 3〜6名のまわりの男を自分の個性的経験と、多少の論理によってしっかりとリードのできる男。 | ||
| 10〜20名の男を、かなり論理的、行動的に納得させてリードできる男。(論理的とは相手を納得させる力) | ||
| 接触するいかなる三次元以下の人たちも、高度な人間性指導ができる。 (長期間効果が必要なため、次元の低い男にはかなり、この次元以上の評価がむずかしくなる) |
||
| 三次元男をリードできる男。 | ||
| 四次元男をリードできる男。 |

