日本経団連の活動、海外進出における日本企業の留意点
社)日本経済団体連合会 専務理事 矢野弘典
はじめに
5月28日に旧日経連と旧経団連の統合による新団体「社団法人 日本経済団体連合会」が発足した。
これにより、両団体がこれまで培ってきた経験とネットワークが共有され、総合的な経済団体として、活動していくこととなった。
新団体発足の意義と、最近の活動に関して以下で紹介する。
日本初の全国区による総合的経済団体
まず1つ目のポイントは「日本初の全国区による総合経済団体である」ということである。これまで旧経団連では、政財界に強力なパイプを持ちながらも、活動は東京のみに限られており、全国単位での活動には難があった。
しかしながら、全国47各都道府県に地方組織として経営者協会をもつ、旧日経連との統合により、全国区の経済団体としての活動が可能になったほか、労働分野での活動にも強みを増した。
日経連精神の継承、発展
「経営者よ正しく強かれ」という理念のもとに、昭和23年に発足した日経連であったが、その理念を3年前に奥田会長が日経連会長就任と同時に、よりわかりやすく言い換えた言葉が「人間の顔をした市場経済の実現」である。
新団体においても、この日経連精神を引き続き継承しさらに発展させていくことで、より信頼される経済団体として活動していこうとしている。
政策提言実行能力の拡大
組織だけが大きくなり、実践能力が落ちるようでは意味がない。世界に対し、国に対し、地方に対し、政策提言実行能力を高める必要がある。そのための具体的方策として、税制改革の提言、規制改革や社会保障の提案などがある。それだけではなく、旧日経連時代から毎年経営者に求められ続けてきた「労働問題研究委員会報告」という大作をこれからどうするかという大きな課題を新団体は抱えている。
労働問題研究委員会は柴田副会長(愛知経協会長)に委員長になっていただき、奥田会長が議長となっている。日本経団連には数多くの委員会があるが、委員長も議長もおいているのは、この委員会の他にはない。そこからもこの委員会の位置づけをご理解いただけるかと思う。
また、政治に絡む提言などに関しては旧経団連時代からの「企業人政治フォーラム」を通じて企業人個人としての参画を仰ごうと考えているが、昨今の政治スキャンダルなども考慮し、この問題については時間をかけながら、慎重に対応していこうと考えている。
きめ細かな会員サービスの実現
経済団体の意義というのは、一企業、一産業ではなかなか実現不可能なことをまとめてやるということである。賛否両論ある中で、会員の意見をまとめて、それを経済界の総意として発信し、実現させることに意義がある。提言は山ほどあるが、実行が伴わないとよく批判を受ける。そうした批判を減らしていくべく全力で取り組んでいく。またこういった大きな課題だけではなく、細かな問題にもきめ細かく対応できるようにしていかなければならない。大企業は十分な人材があり、あらゆる経営問題にも対応できるかと思うが、中小企業はそうはいかない。各地の経営者協会がそうした中小企業の相談窓口となって、より充実した会員サービスを提供できるよう、新団体からも情報提供などこれまで以上のサポートをしていくつもりである。
現場主義の徹底
組織は大きくなればなるほど、陥りやすい落とし穴というのは、現場を忘れてしまうということである。敷居が高くなってしまった組織では、生きた活動はできない。
問題解決のヒントは常に現場にある。人を呼び集めるだけでなく、自ら出向いて情報をかき集めてくるような姿勢がなければ、これからの経済団体としては、生き残っていけないと思っている。
新団体の国際活動
ILOには旧日経連が長らく携わってきたが、ILOは他の国際機関と異なり、政府代表だけでなく、各国の労使代表にもそれぞれ1票の投票権を与えている。それだけ重責を旧日経連も担ってきた。今年も6月に総会があり、奥田会長が使用者側代表として参加した。
また、昨年8月には旧日経連の提唱により、CAPE(アジア太平洋経営者団体連盟)という組織がアジア太平洋地域19カ国の参加を得て、立ち上がった。
奥田会長が初代会長となり、東北アジアでは日本、韓国、中国、モンゴル、南太平洋ではオーストラリア、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニア、西の方ではバングラデシュ、インド、パキスタン、スリランカなどの国々が参画している。
ここでは各国経済団体の相互交流を図るほか、アジアの声をまとめていこうとしている。アジアほど宗教、文化、歴史あらゆる分野において多様性に富んでいる地域は、世界のどの地域をとっても他にない。その声をまとめようというのは大変困難を伴う作業であるが、ぜひとも成し遂げなければならないと考えている。
旧日経連では3年前に、アジアに軸足を置いた国際活動を行うという方針を明確にし、実行してきた。そうした方針の中で、アジア地域に進出した日本企業が、かなり労使紛争で困っているという事情もあり、現地調査を伴うアジア地域での労使関係の調査を行うことを決定していた。このほど中間取りまとめを発表したので、以下、そのなかにまとめた今後海外進出に際して、日本企業が留意すべき人事労務管理のあり方について紹介する。
1.各国の労使関係には、それぞれの歴史や文化に基づく特徴があることを理解すること
2.進出企業は独立した現地の法人であることを明確にすること
3.日本の労使関係に関する理解促進のための発信を進んで行うこと
4.現地の法律や自ら締結した労働協約を遵守する こと
5.企業レベルでの労使関係の構築・改善に努力すること
6.緊密なコミュニケーションによって良好な労使関係、従業員関係を実現すること
7.人事労務担当責任者には優秀なローカルの人材を充てる
8.企業を超えた情報交換に努めること
9.本社として現地の人事労務管理の重要性を認識するこ と
10.優秀な人材確保と維持のために人事管理制度を改善すること
11.世界に通用する企業としての魅力を高めること
以上の11項目はアジアに進出している企業に限るという性格のものではなく、普遍性を有する。しかしながら、多様性を特徴とするアジアにおいては、特に現地の人事労務に対して心を砕くこと、現地の文化や習慣を理解する必要性を強調しておきたい。
最近の日本経団連理事会における主な議件・報告事項
| 議件 | 1.税制第3次提言「税制抜本改革の断行を求める」の件 | (1)個人所得課税改革 (2)法人所得課税改革 (3)資産課税改革 (4)地方課制改革 (5)様々な政策課題と税制 (6)少子高齢化社会における活用の維持を提言。 |
| 2.WTO「人の移動」に関する提言の件 |
(1)更なる自由化 (2)入国・滞在関連規制および手続きの透明性の確保ならびに各国約束表の明確化 (3)入国・滞在関連手続き簡素化・迅速化を提言。 |
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| 3.インターナショナルに関する提言の件 | (1)一条校に準ずる教育機会として認める (2)卒業生に対し上級学校入学資格を付与する (3)国際教育への取り組みに対する助成を行なう (4)税制上の優遇措置を導入 (5)施設整備の弾力化を図ることを提言。 |
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| 4.PFIの推進に関する第2次提言の件 | (1)より質の高いPFI事業の実現に向けた行政の意識改革 (2)法制度や手続き等の面で解決すべき課題 (3)PFI事業の推進体制の整備を提言。 |
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| 5.経済活性化に向けた規制改革緊急要望の件 | (1)新事業等の創出とその円滑化を図るための規制改革 (2)公的関与の強い分野での事業を活性化するための規制改革 (3)ビジネス・生活インフラ整備のための規制改革について要望。 |
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| 6.知的財産戦略についての意見の件 | (1)知的財産の創造の推進 (2)知的財産の保護の強化 (3)知的財産の活用の促進 (4)知的財産関連人材の養成について示した。 |
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| 報告事項 | 1.企業の社会的責任に関する国際基準・規格の動向と今後の対応について | 今後わが国企業が企業の社会的責任に関する国際基準・規格にどう対応すべきかについて報告。 |
| 2.ILO総会等について | ILO総会、CAPE総会、ILOグローバル化の社会的側面に関する世界委員会について報告。 | |
| 平成14年7月16日 | ||
| 議件 | 1.国際投資ルールの構築に関する提言の件 | (1)国際投資ルールの必要性 (2)新ラウンド交渉のおけるWTO投資ルールの策定 (3)積極的な二国間・地域協定の締結 (4)国内投資環境の整備について提言。 |
| 2.廃棄物・リサイクルの基本問題にに関する提言の件 | 循環型社会の形成推進に向けて (1)不法投棄への対処 (2)廃棄物処理法の見直し、資源有効利用促進法や各種リサイクル法の拡充強化 (3)廃棄物の定義、廃棄物処理業・施設に対する規制の見直し等について提言。 |
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| 報告事項 | 1.労働問題研究委員会発足ならびに雇用保険改革等について | (1)労働問題研究委員会発足 (2)雇用保険制度改革に臨む基本的姿勢 (3)連合の15年度春闘方針について報告。 |
*これらに関する資料をご希望の場合は、事務局までお問い合わせください。
(本稿は7月18日の本会理事会講演会にて矢野氏からご講演いただいた内容に基づき事務局で編集したものです。)

